こんな本置いてます vol.162/ひとり日和

第136回芥川龍之介賞です。私はよく1年間の時系列のストーリーを描いた本をよく読む。無意識に選んでしまっているのか、そういう物語を扱うモノが多いのか、本を選ぶ時はタイトルと表紙の雰囲気で選んでいて、中身を見て選んでいないので偶然には違いない。この本もキレイに春夏秋冬、4等分に連続した章立てで物語は進んでいきます。20代の女性が東京に行って、母の紹介で東京暮らしの見知らぬ70代のお婆さんとの共同生活を始める。主人公として描かれているのはどこにでもいる普通の若い女の子。少し依存心が強かったり甘えたところが残っていて地に足がついていない年ごろ。が、故に共感がもてるかどうかは読み手によって違うと思います。私は普通の人が淡々と日常を過ごしていく、ドラマチックな展開が無いストーリーも好きです。東京へ行くといっても、一人だと金銭面や生活面が不安。共同生活と言っても、自分と近い年齢や父や母位の年代だと、意識したり干渉されたりで窮屈な事もある。お互い価値観が違うと分かり切っている70代との年齢差が居心地をよくさせる。どんな仕事してても、好きな人に出会っても、付き合うことになっても、別れることになっても、おばあちゃんは軽くスルー。親ならばオロオロおたおたと言葉には出さずとも、干渉されている重い空気も感じてしまう場面です。表現はされていませんが、そういった空気感に癒されている部分はあると思います。本格的に社会に出る前に色々な意味でひとりを満喫する。誰もがしてみたい贅沢な1年とも言えます。春で始まり冬で終わる。そして、新しい生活が始まる春。春夏秋冬って物語を作るには便利ですね。