批判精神に富んだ本オタクで、決して人から好かれそうもない偏屈な書店主フィクリーのものがたり。そんな彼だからこそ、隠しきれず溢れてしまう娘と妻への愛が、心を打ちます。各章、フィクリーの本の書評から始まるというのも面白いです。ただ、その本の書評がだんだんと意味を持ち始め、どういう形でこの物語が終わるのか不安になってきます。その不安は、こういう物語はハッピーエンドで感動を味わいたいという期待からきていると思います。 嬉しい出来事も悲しい出来事も、過剰に表現されず誰でも起こりうる人生の出来事であるかのように、淡々とつづっていく文章も、私は好きです。 そして、私の勝手な期待と不安な憶測なんかどうでもいいエンディングは、もちろん満足しています。