ロシア帝国が終焉していく時代の話です。書かれたのは現代です。世界に伝わる童話や神話のような雰囲気で、都市伝説のような不思議な話が次から次へと出てきます。死の瞬間に青い蝶に羽化する人の話や、訳も分からず人格が変わってしまう人は多数登場し、ペルシャ絨毯の織り間違いを探すことを楽しみにしている人たちや、新しい信仰を始める人、読んでいても大きさが想像つかない巨大な木馬、何でも食べてしまってどんどん巨大になっていく熊(これも大きさが想像できない)、魔術師のような手品師や目に見えないくらい小さいのに何故か存在が認められている魔女などなど。約40の物語はどの話も結論がありませんでした。しかもほとんどがハッピーエンドで終わらない話で、一日一話づつ読みましたが、どんよりとした曇り空しか想像できず、モヤモヤした気分を引きずります。何かを示唆しているのか、比喩しているのか考えても私には分かりませんでした。日常なんて答えが出なくても過ぎていくという事を教えてくれているかのようです。ロシア革命の影響でサンクトペテルブルクからオランダに逃れた際に、おじいさんからロシアを懐かしむように聞いた話となっています。読み終わって感じたのは、このお話はある意味、日本の近代史のキーパーソンでもある最後のロシア皇帝ニコライ二世の話でもあるような気がしました。ロシア皇帝が作り出してきた絶大的な権力による圧政が産み出した、物語のように感じました。出口の見えないお話ですが、何故かほんわりした温かさも感じます。子どもにはお薦めできませんが、大人にはお薦めできる大人の童話です。