予備知識無しで読み始めました。タイトルと3人が輪になって踊っているのどかな表紙を見てヨーロッパのお話かと勝手に思って読み始めた瞬間から、とんでもないギャップに襲われます。つけられたタイトルの真意は知りませんが、世界の果ては読んでいる私の足元にありました。この本は読む時代によって印象も関心も変わると思います。コロナウイルスや中国とアメリカの微妙な関係によって社会不安が蔓延している今読んだから、心に刺さりました。満州事変から太平洋戦争、戦後へ続く物語。2015年に出版された本ですが現代を予見しているかのような本です(こうならないといいという願いも込めて)。満州で出会った日本人の女の子二人と一人の朝鮮人の女の子。3人の女の子の一生を描いた物語です。日本人が行った差別と虐待。太平洋戦争で日本が負けて逆に差別と虐待を受けてしまう。中国に残った日本人と日本に渡った朝鮮人。悲惨な虐待や虐殺の場面も出てくるこの本を読み切れるのは、子どもの素朴な目線で語られているから。場面転換も早くてわずか2ページで幸せな日々やほっと安心していた日々ががらっと変わって、地獄に落とされてしまうというシーンが幾度も登場します。でも、この唐突な場面転換は読んでいてあまり違和感は感じません。きっと、この時代はこのわずかな行数の場面転換より早く、自分の状況が変わっていったのではないでしょうか。太平洋戦争の頃の話はテーマが暗くて重くて、あまり見ることはありませんでした。だから、真珠湾攻撃で始まって原爆を落とされて終わって、ヨーロッパではヒトラーが虐殺を行っていた。そのくらいの知識ですら他人事のように見ていました。でも、戦争によってもたらされた事、傷つけられた事はもっともっとありました。どれだけの人の人生が狂わされてきたのでしょうか。そして、気づくと戦後って現在もまだ続いています。この物語はフィクションですが、巻末に書かれている膨大な参考文献から実際にあった出来事がなぞられている事は想像できます。こんな事が起こっていた事も知らなかったという意味でも、ほんの少しのきっかけで世の中が様変わりしてしまうという意味でも、自分の足元にこの世の果てが潜んでいます。差別を受けた人たちも差別をしてきた人たちも、犠牲者です。世界の指導者たちの犠牲者です。誰を指導者に選ぶのか本当に真剣に考えなければいけません。いつこんな事が繰り返されてもおかしくない現代だからこそ、正しい指導者を選ぶためにも読まなければいけない本だと思います。