こんな本置いてます vol.31/ねこのおうち

小川糸さんの『あつあつを召し上がれ』と柳美里さんの『ねこのおうち』です。柳美里さんの『ねこのおうち』。猫を飼う事になった普通の人の普通の物語です。普通の人というのは、人と接する事が不器用で悩みを持った等身大の我々普通の人です。ねこと出会って完全に悩みが消えるかというと、そういうわけではありません。でも、気持ちは晴れます。そういうごく普通の当たり前の日常が描かれているので、共感を呼びやすい内容です。特に地の文の心情の描かれ方が面白かったです。時にはねこの心情が描かれていたり、小学生の女の子の心情が描かれたり、大人の男性の心情が描かれたりしています。ねこも含めたそれぞれの世代の心情の描かれ方の違いが巧みに表現されています。 個人的には小学生の留香ちゃんが一番好きです。おともだちとの関係や家族との関係。ちょっとの事で、不安定に揺れ動く、小さい子の心が可愛かったり守ってあげたかったり。この物語は主人公がたくさん出てきますが、その登場人物たちをつなぐのが、カモメ動物病院の港先生です。この物語の彼の役割は本当に大きいです。彼だけが悩みを持っていないような明るさと包容力でねこと人を包んでいきます。絵本を読むような客観的でたんたんと書かれた情景も心地よかったです。

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