こんな本置いてます vol.207/色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年

以前紹介した『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が村上春樹さんの翻訳本でしたが、村上春樹さんの長編を読むのはこれが初めてです。最初の一ページの一行目を読んで驚きました。これが村上春樹かと。最初の一行目で人を惹きつける恐ろしい力があります。タイトルも謎めいているので少し書くだけでネタバレになってしまうので、何をどう感想してよいのか難しいです。予備知識なしで読み始めましたが愛知県出身の私としては名古屋が舞台になっていて、とても興味深い内容でした。名古屋がしっかりと捉えられています。かつての名古屋は見栄っ張りのイメージがありましたが、私が愛知県に住んでいたバブル期の名古屋はとにかくオシャレな街でした。東京と大阪の2大都市の中間に位置して、その2大都市に負けまいという気概?気負い?に満ちていました。名古屋の郊外から名古屋に行く人は必ずオシャレしていかなければならないという呪縛をまとって出かけ、暗黙のうちにお互いがお互いの服を値踏みして、どれだけオシャレか競い合っていました。地味な服装で行ってしまうと仲間外れのような疎外感も感じました。当時、東京や大阪に遊びに行ったときは、名古屋の人よりは普通の服装で、一生懸命背伸びしている名古屋が却って垢抜けない感じがしました。ただ、この本が出版されたのは2013年。バブル期からはかなり遠ざかっています。でも、主人公の友人が勤めているオフィスの受付の女性は、別の友人が勤めているレクサスのショールームにいる女性と同じで名古屋でしばしば見かけるタイプで、整った顔立ちで身だしなみがよく髪をいつもカールしていると表現しています。バブル期と変わらない名古屋嬢の姿を想像せずにはいられませんでした。話は大きく逸れましたが初めて読む村上春樹さんの文章は、オシャレな用語が多く贅沢な暮らしを想起させる主人公たちが登場し川村元気さんの小説を思い出しました。また、色々な謎が満ちていてグイグイ関心を持たせますが出口が見つからず、ハルキストになれるか試されているような気さえします。確かにリアルな人生は解決できない謎も多いですが、少し現実離れしたストーリーと対比すると不親切な感もあります。あくまでも主人公の心の動きが一番大事なテーマであるかのようです。そして、グロさ。このグロい表現は本当に必要なのかどうか気になってしまいます。色々と読みながらソワソワソワソワさせられる、これも村上春樹さんの魅力のひとつなのでしょうか。さて、長々と書きましたが、肝心なお知らせを一つ。ほとりカフェ本日も11時にオープンします。