こんな本置いてます vol.204/リボルバー

次に読む本は原田マハさん。原田マハさんの作品が読みたい。と、理由はともあれ妙な衝動に駆られて原田マハさんの作品を買いに本屋へ行きました。しかし、大きな本屋では置かれている作品が多すぎて何を買ったらよいか悩んでしまうので、小さな本屋に行くことにしました。小さな本屋は置かれている作品が限られている。と、言うよりも最近発刊された本しか置かれていない。と、言うわけで偶然ではなく必然的にリボルバーを手にすることとなりました。そして、読んでみました。うん、はっきり言って面白いです。期待を裏切らないどころか期待以上に引き込まれて、一気に読めてしまいます。面白さの理由の一つとして、巻末に紹介されている参考文献の数々とオルセー美術館やロンドンナショナルギャラリーなどなど協力者の数々、さらにプロデューサーという役割の方も2名記されています。小説という作品も一つの巨大なプロジェクトの中で生まれているという事がよく分かります。さて、物語は史実と虚構が入り混じったフィクションです。そして物語は、最終ページに書かれている実際の出来事、2019年に2000万円で落札されたゴッホが自殺に用いたとされるリボルバーに端を発します(ストーリーはそれより少し前の出来事です)。ゴッホの自殺には今なお諸説があり、その真相を描いたフィクションです。ゴッホとゴーギャンの関係性やそれぞれのキャラクターも描かれていて、ゴーギャンがゴッホの元を去ることによって起こされたゴッホの”耳切り事件”にも触れられています。どうしてこれだけストーリーに引き込まれるのか?主人公の冴と冴が勤めるパリのオークション会社の社長とスタッフが読者が考えそうな(少なくとも私が考えそうな)推理(下世話な憶測も含めて)を展開してくれるので感情移入がしやすいという事も一つです。例えば、ゴーギャンが去ってゴッホが失意のあまり自分の耳を切るなんて、ただならぬ愛憎を想起してしまいます(が、ただならぬ愛憎はすぐに否定されます)。そして、ストーリーに引き込まれるもう一つの理由は、ゴーギャンの独白シーンも含まれたゴッホ、ゴーギャン、テオの性格や心情がリアルに伝わってくるところです。これが、巻末の数々の参考文献や協力者によって説得力を与えられているのではないでしょうか。あくまでもフィクションですが、史実を邪魔しないこういうフィクションは本当に楽しいです。美術に詳しくない人でも間違いなく楽しめると思います(私もあまり詳しくありません)し、これをきっかけにゴッホやゴーギャンの作品に興味も出てくると思います。それにしても、ゴッホもゴーギャンを見ても芸術家は特異な存在に感じてしまいます。その理由はゴーギャンの言葉を借りれば「画家だからです」という言葉がすべてだと思いました。もちろん全ての画家が特異な存在では無いことは言うに及ばずですが。最後に、ストーリーに引き込まれる最後の理由ですが、謎を解いて終わりではなく、余韻を与えてくれることです。謎を解いた後に主人公と一緒に体験する余韻が終盤に盛り上がった高揚感を整えて、気持ちよく本を解き放すことができます。