こんな本置いてます vol.172

彩の国さいたま芸術劇場。蜷川幸雄さんの作品が数多く上演されていた劇場です。私は一度だけ訪れた事があります。それは今から6年前、2014年に後にノーベル文学賞を獲得したカズオ・イシグロさんの『私を離さないで』を原作とした作品が上演された時です。もちろん蜷川幸雄さんの演出で多部未華子さん、木村文乃さん、三浦涼介さんが出演していました。夕方からの上演ですが、車を停める場所を確保したくて、道が混むのも避けるために、朝早くから行ってしまったおかげで、彩の国さいたま芸術劇場の駐車場に余裕で停めることができました。ただ、そこから徒歩では移動できる場所も制限されて、土地勘も無かったので、彩の国さいたま芸術劇場に入場することができたのでそこで退屈な時間をつぶしていました。ところが、昼間の劇場はとても面白い空間でした。あちらこちらで劇団員の方が目いっぱい大きな声でセリフの練習をする光景が見られました。そして、出演者の方にも出会うことができました。木村文乃さんとすれ違って、三浦涼介さんは他の出演者の方と談笑していましたが、私の顔を見るなりさぁーっと楽屋(?)の方に行ってしまいました。突然の出来事で声は掛けられませんでした。再びしばらくエントランスでボーっと過ごしていたら、蜷川幸雄さんが歩いてこられました。私の脇を2回ほど行ったり来たり、通り過ぎました。またしても、声をかける勇気はありません。でも、昼間の劇場ってこんなに楽しいんだって、チケット代以上に満足できました。上演が始まる時間の1時間位前には、外に出て他の観客の方と一緒に並んで待ちました。今も昼間は自由に入場できるかどうかは知りませんが、6年前は入場することができてラッキーでした。さて、蜷川幸雄さんはその時は歩いている姿を目にして、とても病気を患っているようには思っていませんでした。ところが、翌年テレビで見た姿は車いすで移動している姿で驚いたことを覚えています。そして、その翌年にお亡くなりになりました。この本は亡くなる前年の2015年に出版されています。蜷川幸雄さんが演出した作品の中でもシェークスピアに焦点が当てられて、全26タイトルのあらすじと演出内容、インタビューなどが掲載されています。蜷川幸雄さんのファン向けではありますが、上演時の写真も掲載されていて読みやすい内容です。巻末には車いすに乗っている蜷川幸雄さんが使われています。本の紹介よりもとりとめもない思い出の方が長くなってしまいました。